成人で上下の顎の骨の関係がずれていたり、顎が変形してゆがんでいる場合には「外科的矯正治療」といって、「手術を併用した治療」を受けることになります。
保険適用の場合の治療費は、一般的な矯正治療費の3分の1~2分の1程度です。
※手術を前提に行う矯正治療は、当院のように指定された医療機関で矯正治療を受けた場合に限って手術と矯正治療の全額が健康保険の適用となります。
手術をした際に上下の歯並びが理想的な状態でかみ合うように、手術前に予め矯正治療をして歯並びを整えておきます。これを術前矯正治療といいます。
術前矯正治療が終了したら、2~3週間程度入院して全身麻酔下で顎の骨を移動させる手術を受けます。手術自体は口の中からメスを入れるので、手術後に顔に傷が残ることはありません。
手術後に仕上げの矯正治療を行い、歯並びを理想的な状態にします。これを術後矯正治療と言います。 術前術後の矯正治療方法と、保定方法は一般の矯正治療と同様です。
当院では、成人の方が多いので、外科的矯正治療も多くなっています。成人の場合、顎の成長を利用した矯正治療や、歯の生え変わりを利用した矯正治療が不可能であるために、外科的矯正治療を適用しないと美しい歯並びを手に入れることが難しいケースも多くなります。
外科的矯正治療の手術は一旦、顎の骨の一部分を骨折させると考えてください。骨折している間に、顎を引っ込めたり、出っ歯の人の場合は顎を出したりして、正しい位置に固定します。そうすると、骨折した骨がギブスで固定していると、元に戻るのと同じように、時間がたつにつれて、顎の骨も正しい位置にくっつきます。
当院では後遺症を未然に防ぐために、口腔外科医を紹介し、口腔外科医から手術の話を聞いてもらっています。起こりうるリスクに関しては、十分に説明してもらっています。
1.神経の麻痺のリスク
手術中に神経に触れる可能性、骨をずらした際に神経が引き伸ばされたり、圧迫されることにより、神経が麻痺する可能性が少なからずあります。したがって、通常は半年以内に回復しますが、2年経っても回復しない場合は、ずっと回復しない可能性が高いようです。ただし、当院の患者様の場合、神経の麻痺が後遺症として残る割合は20人に1人ぐらいです。
2.ウィルスの感染のリスク ほとんどありませんが、大量に出血した場合は他人の血を輸血しますので、万が一の可能性は否定できません。エイズ、C型肝炎感染ウィルス、未知のウィルスに輸血によって感染する可能性が極わずかですがあります。しかし、外科的矯正治療の場合、自己血輸血といって、自分の血を牛乳瓶1本~2本分ぐらいの量を採決しておきます。通常、輸血は必要ないのですが、必要になった場合は、この自分の血を輸血するのでウィルスに感染することはありません。